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『親指ピアノ道場!〜アフリカの小さな楽器でひまつぶし〜』

著者:サカキマンゴー

出版社:ヤマハミュージックメディア 2009年初版刊行

著者のサカキマンゴ―は、大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)でスワヒリ語を学んでいた学部学生時代のあるとき、親指ピアノの音や響きに惹かれて、ついに在学中に単身アフリカに渡航する。そして、世界的に有名なフクウェ・ザウォセという親指ピアノの奏者の家を訪ね、弟子入りを懇願する。禅問答のようなザウォセやその一門とのやりとりを重ねる中で、さわり音という親指ピアノ独特の「ノイズ」が作り出す音の共鳴や面白さに、さらにのめり込んでいく。

 この本は、その後数十年にわたって日本とアフリカ各地を往き来しながら親指ピアノの世界を探求し続けている著者の中間報告のような内容になっている。タンザニアだけではなく、ザンビアやコンゴ民主共和国など様々なアフリカの国々に息づく、個性ある親指ピアノと奏者たちの姿が生き生きと描かれている。中間報告と書いたのは、この本が上梓された後も著者は自前で作り上げたエレキ親指ピアノを使って、また出身地の鹿児島の方言や民話の要素を取り入れた独自の音楽世界を開拓し続けているからである。2019年12月13日にはアゴラ・グローバル1階のカフェで開かれた「アフリカンウィークス2019」のトークライブ企画に出演して、演奏とトークを披露してくださったのも記憶に新しい。

 タイトルに「道場」と付いているように、この本は単なるアフリカ音楽の評論の本ではない。親指ピアノ演奏家としてアフリカ各地で道場破りの勢いでアフリカ音楽と向き合ってきた著者の肉声が綴られている。のみならず、卒業論文で親指ピアノの運指を紙に落として記録する方法を編み出した著者による親指ピアノの演奏法入門や、自分で親指ピアノを作りたい人向けの工作指南という付録まで付いている。残念ながら本書は絶版になってしまっているが、著者の言うところの「ひまつぶし」の方法、すなわち生き方のヒントもたっぷり含まれている貴重な本なのでぜひ読んでみて欲しい。

​<こちらの紹介文は東京外国語大学アフリカ地域専攻の教授の方よりお寄せ頂きました。>

『うしろめたさの人類学』

著者:松村圭一郎

出版社:ミシマ社、2017年初版発行

 

 

タイトルにある「うしろめたさ」とは、路上に住んでいる人やお金がなくて生活に困窮している人などに対して、自分が彼らよりも不当に豊かであるという「うしろめたさ」を指しています。彼らの犠牲のうえで自分の豊かな生活が成り立っているのではないか、という「うしろめたさ」。どうしようもない圧倒的な格差への「うしろめたさ」。このような「うしろめたさ」の構造を、「経済/非経済」「交換/贈与」という軸から分析していったのが、この本です。著者のエチオピアでのフィールドワークに基づいて、ゆったりとした語り口で考えが紡がれています。

エチオピアには、ふつう商品交換が行われるような場においても、「贈与」の関係があふれているそうです。本の中に、こんなエピソードがありました。ご飯を食べようとしてレストランに入ったとき、そこで知人が食事をしていたとします。すると、相手からかならず「一緒に食べろ!」と言ってもらえるそうです。これは、「食欲」という欲求が共感されたことで、食べ物の「独り占め」をうしろめたく感じさせ、「一緒に食べよう」という結論に至るという理論なのだとか。逆に、あなたがなにかを食べているときにエチオピア人の知り合いが通りかかっても「一緒に食べよう」と声をかけるのが礼儀なんだそうです。このように情に満ちた関係にあふれているエチオピアは、まさに「共感大国」。「共感」はこの本のキーワードのひとつでもあります。

タイトルにある「人類学」と見ると、なんだか難しそう…と感じてしまうかもしれませんが、この本は理論的に詰めるのではなく、まるで詩のようにすっと心に沁みてくる優しい文章で私たちに訴えかけてきてくれます。もちろん、その優しい文章の背景には著者が考え抜いた理論があります。人類学に詳しい方も、興味を持ったことがなかったという方も、どなたでも楽しめる作品です。

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『ソマリランドからアメリカを超える』

著者:ジョナサン・スター 訳:黒住奈央子、御松由美子 解説:高野秀行

出版社:角川書店(株式会社KADOKAWA) 2017年初版発行

 

 

簡単に言うと、「アフリカの東北端ソマリランドの辺境に住む遊牧民が、発展した教育を受け、アメリカの名門大学に入学するまでになる」というノンフィクションです。 主人公は、ソマリ人の叔父を持つアメリカ人の男性。事業で稼いだお金を資本に、叔父の祖国であるソマリランドに1から学校をつくろうとします。ソマリランドの田舎に建てられた学校は、初めは外国人(アメリカ人)が建てた学校ということで子どもたちにも保護者にも不信感を抱かれます。しかし入学後、そんな子どもたちが次第に学力や国際的に通用するモラルを身につけ、グローカル(世界的にも、地元でも)に活躍するべくアメリカの大学進学を目指します(実際にハーバードとか行っちゃいます)。

この本のおすすめポイントはいくつもありますが、まずひとつには、ソマリランドの状況がよくわかる、という点です。実はソマリランドとは国際的に国家承認されていない地域で、いわゆる「ソマリア」という国の中にあります。ソマリア内部は主に3つの地域にわけることができ、ソマリランドはそのうちの1地域なのです。ソマリアというと、入国するのも難しいような危険地域というイメージがありますが、ソマリランド自体は実は平和な場所。とはいえ、ソマリア入国が難しいことには変わりないので、ソマリア内部の情報は日本にいるとなかなか手に入れることができません。しかしこの本は、著者が実際にソマリアに住み、学校で教えた経験から書かれているもの。出版年が2017年ということからわかるように、実際に学校をつくりはじめたのも2010年代という比較的最近のことです。この本から、いまソマリランドはどういう状況にあるのか、という情報を手に入れることができます。

 また、ソマリランドと日本との文化の違いを学ぶことができるのもこの本の魅力です。例えば、ソマリランドの学校のテストではカンニングが横行しているらしい…!?それも、先生までもが黙認しているらしい…!?なかなか衝撃的な事実ですが、詳しくは本文で…。 ソマリランドに興味がある人、教育に興味がある人、異文化交流に興味がある人、アメリカの受験制度に興味がある人(著者がアメリカ人なので結構詳しく書かれています)、イスラーム教に興味がある人…などにおすすめです!読みやすい作品なのでぜひ!

『恋する文化人類学者』

著者:鈴木裕之

出版社:世界思想社、2015年発行

 

 

私がこの本を読んだのは、著者の鈴木裕之先生が教えていらっしゃる大学の専門科目の授業で、教科書として指定されていたことがきっかけでした。大学で専攻地域としてアフリカについて学んでいますが、正直なところ文化人類学がどのような学問なのか、よくわかってはいなくて、興味もあまり持つことができていませんでした。でも、この本は、私が文化人類学に対して感じていた壁のようなものを、優しく切り崩してくれて、「アフリカって、文化人類学って、こんな面白いところもあるんだよ!」と教えてくれているような感じなんです。ただアフリカと文化人類学のなんたるかを語るような難しい部分は一切なくて、鈴木先生ご自身がアフリカ人女性とのご結婚を通じて経験された出来事を文化人類学の視点から分析されていたり、補足的に古くからアフリカに伝わる昔話なども紹介して下さっていたり、とにかく具体的なエピソードがたくさんあって、イメージが次から次へと湧いてきます。大学の授業では、読む範囲が指定されているので進むスピードは比較的ゆっくりなのですが、私は読めば読むほど先の話が知りたくなって、どんどん読み進めてしまっています(笑)

それから、ここがもう1つのイチオシポイントなのですが、本は基本的に鈴木先生の視点で書かれた文章が中心なのですが、ところどころに先生の奥さんが登場されて、語り口調で書かれた部分もあるんです!いわゆる話し言葉のままで書かれているので、雰囲気がガラッと変わって、直接お会いしたことはありませんが奥さんの人柄も伝わってくるよう文章になっていて、個人的に「なんだかホッとするな〜」と感じられるところです。  

私のように、アフリカについて学び始めたばかりの人にはもちろんですが、アフリカや文化人類学にあまり馴染みがない人でも、楽しく面白く読める一冊なのではないかと思います!

<こちらの紹介文は東京外国語大学アフリカ地域専攻の学生の方にお寄せ頂きました。>

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『アフリカの民話集 しあわせのなる木』

著者:島岡由美子

出版社:未來社 2017年発行

 

 

ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)。タンザニアに伝わる昔話を中心に20個の民話がまとめられたこの本は、全てのお話がこの言葉で始まります。日本の昔話も同じですよね。この言葉を聞くたびに、これからどんなお話が聞けるんだろうとワクワクしていた幼い頃の気持ちを思い出しました。私がこの本を読んで見ようと思ったのも、小さい頃に聞いたお話が、成長してからもずっと自分の中に残っているなと感じたことがきっかけです。なんでかわからないけれど、もも太郎とか浦島太郎とかうさぎとカメとかカチカチ山とか、今でも語れるくらいに覚えている。アフリカの人たちも小さい時に聞いてからずっと自分の中に持っている物語ってあるのかなと気になって、この本に辿り着きました。  

お話の始まりは同じでも、やっぱり中身はアフリカらしさでいっぱいです。日本の昔話には出てこないような動物もたくさん出てきたり、シャターニという森の精霊にまつわるお話もあったり...。私が一番好きなのは、「バオバブの木のなみだ」というお話です。とてもユニークな見た目で有名なバオバブですが、現代のアフリカでは雨が降らない時に人々が雨乞いをする木でもあります。なぜバオバブの木にお願いするのでしょうか。そんな疑問にも答えてくれるお話で、もともとバオバブの木の見た目が可愛くて好きだったのですが、もっともっと好きになりました(笑)。  

またこの本には、たくさんのカラフルな挿絵が溢れています。ティンガティンガ・アートという名前がついていて、6色のペンキから生み出される多様な色彩で、物語の場面を明るく鮮やかに彩っています。初めて聞くお話でもアートのおかげでお話の一場面一場面が思い浮かべられて、まるで紙芝居を読んでいるような、楽しい気持ちで読み進められました。幼い頃を思い出したい大人の方だけではなく、小さい子供でも楽しめるお話が詰まった本だと思います!

『バッタを倒しにアフリカへ』

著者:前野ウルド浩太郎

出版社:光文社、2017年発行

 

 

「蝗害(こうがい)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。蝗害とは、バッタなどの大量発生によって引き起こされる災害のことです。空を暗くなるほど埋めつくし一斉に宙を飛ぶバッタの写真を見たことがあるかもしれません。アフリカの乾燥地域ではこの蝗害の被害が深刻でした。こうしたバッタは1度群れで到来すると作物を食い尽くしてしまうため、大量発生した地域は食糧難に見舞われてしまうのです。この本の作者、前野ウルド浩太郎氏は蝗害を食い止めるため、そしてバッタ研究で生計を立てるためにモーリタニアに渡航し、サバクトビバッタの習性を研究し始めます。この本ではモーリタニアでの研究生活のリアルが事細かに軽快な語り口で綴られています。研究設備の不足やモーリタニアの気候のみならず研究費用の問題が終始若き研究者を悩ませます。そうしたアフリカでの研究生活事情に加え、研究所のババ所長はじめ助手として雇ったティジャニ氏や周りのモーリタニアの人々との交流も必見です。ヤギの賄賂や砂漠でのティータイムなどワクワクするような文化体験がそこにはあります。 一方でこの本はバッタと前野氏のいきいき砂漠ラブストーリーでもあります。 

『淡い月光に照らされたバッタは艶っぽくも美しく、鼻の下を伸ばしながら深夜の密会に興じる。』(本文より) 

なかなか捕まらないバッタにやきもきしゴミムシダマシという他の虫に浮気したり、バッタを思って悶々としたりと壮絶な愛の物語としても読み応え満点です。

そして先日、筆者の前野氏がサバクトビバッタの習性についてついに論文を発表しました。この本に綴られている研究生活の成果が蝗害に立ち向かう大きな一歩として世に出された今、ぜひ読んでおきたい1冊です。砂漠でのご馳走や少し気を抜くと狙われる給料、バッタへの止まない愛情、そしてゆったりと流れるアフリカンタイム……。本書を読めばアフリカの空気とそこで繰り広げられる物語に魅了されること間違いなしです。

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『カラハリが呼んでいる』

著者:マーク・オーエンズ&ディーリア・オーエンズ 

訳:小野さやか、伊藤紀子 

監修:伊藤政顕

出版社:早川書房、2021年発行

 

 

この本は、若いアメリカ人の男女が故郷から遠く離れたアフリカの地で、まだ人が踏み入ったことのないありのままの自然と、7年に及ぶフィールドワークを通じて正面から向き合っていくという、ノンフィクションのお話です。本の著者でもある2人の視点から、アフリカでの研究の記録を振り返る形で進んでいくのですが、一番の魅力は自然描写の豊かさです。私がこの本を読んだのは、秋口に入ってからでしたが、極度に乾燥したカラハリ砂漠の描写部分では、夏のむせかえるような暑さが無意識に思い出されてしまうほど、臨場感たっぷりの表現で溢れています。特に、観光客はもちろん野生動物を保護するレンジャーにもほとんど会ったことがないという、アフリカの奥地に生息する野生動物と対峙する場面は、こちらまで緊張してしまうほど情景がありありと浮かんできて、まるで自分も著者の2人と一緒にフィールドワークのためのキャンプにいるかのようでした。  

また、アフリカで野生動物の研究をするために、ほぼ全財産を投げ打ってアフリカに渡ったエピソードなど、若いながらも研究に没頭する姿が、大学生としてとても身近に感じられました。研究への情熱の前に、研究費が足りないという経済の問題が立ちはだかるといった、現実味あふれる部分も、この本を読んでいて思わず感情移入してしまう理由なのではないかと思います。  

アフリカの自然環境に興味がある方はもちろんですが、フィールドワークをしてみたいという大学生にとっても読んで面白い本だと思います!

​<こちらの紹介文は東京外国語大学の学生の方よりお寄せ頂きました。>

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